根管治療とは、歯の中にある根管という管の中の神経や血管を取り除き、薬を詰めてその上に被せ物をする治療法です。むし歯が進行すると、エナメル質、象牙質、歯髄へと進行します。そして、歯髄にある根管内の神経まで虫歯菌に冒されてしまうと、激しい痛みが生じます。そこで、神経を取り除いて薬を詰め、再感染を防ごうというのが根管治療の目的です。虫歯治療の最後の砦と言っても過言ではありません。
神経にまで進行したむし歯を放置すると、神経・血管が壊死して膿が生じる恐れがあります。状態が悪くなると治療回数も増えてしまうだけではなく、抜歯が必要になるリスクも高まるため、歯科医院を早めに受診しましょう。
根管治療は100%の成功を保証できる治療ではありません。様々な調査によると抜髄に関しては90%以上であると言えます。しかし日本では2012年の医科歯科大学の調査によると50%以下であることがわかりました。この差は根管内に細菌が侵入するか否かによると考えられています。根管は右図のように網目のような非常に複雑な形態をしており、一度根管内に細菌が侵入してしまうと除去が困難になります。そのため根管の中をなるべく汚さない、つまり唾液中などに含まれる細菌の侵入を防ぐことが重要になります。根管内への細菌の侵入を防ぐためにラバーダムと言う処置が必要になります。ラバーダムの使用の有無で根管治療の成績に影響しているのではないかと考えられています。
また一度根管治療を行ったあとに根管内が再感染を起こした場合の再根管治療については更に治療の成績が落ちる可能性が高いと考えられています。再根管治療に関しては69%(Gorniら)、84%(トロント大学)と研究により成功率にばらつきがみられます。いずれにしても100%の治癒率にはならないということが示唆されております。質の高い治療を行うことが根管治療の成功率を上げる、歯の保存するうえで重要になるということです。そのためにラバーダムはもちろんマイクロスコープを使用することが成功の鍵となります。
MTA セメント
バイオセラミックスと呼ばれる生体親和性に富んだ素材です。う蝕が大きい場合の歯髄への覆罩剤として用いたり、根管に穿孔が認められた場合に穿孔部のリペアに用いられます。そのため穿孔が認められた場合には抜歯を回避できる可能性があります。
外科的歯内療法
前述の通り、様々な研究から根管治療は100%成功する治療とは言えない治療であることが知られています。特に根管治療のやりかえ、感染根管処置の場合はさらに治療の成功率が下がってしまいます。通常の根管治療で治癒しない場合は次のような治療が必要となります。
- 歯根端切除術
- 意図的再植
- 抜歯
歯根端切除術 (Apicoectomy)
歯根端切除術とは通常の根管治療で治癒せずに、根の先、根尖に感染が及んでしまってたり、噛んだ際の痛みや違和感が残ってしまった場合に根管内からのアプローチではなく、外科的に感染を取り除く治療です。この治療は根尖にできた病変とともに歯根の一部を切除するため歯根端切除術と名前がついています。この治療を行うことで
意図的再植術 (Intentional replantation)
意図的再植術は1966年に近代歯内療法学の父Dr. Grossmanが提唱した治療です。この治療はその名の通り、一度抜歯を行い、根尖部の病変を口腔外にて除去し、逆根管充填を行った後に再度、抜歯窩に歯を戻すという治療方法です。全身的な理由や解剖学的な理由で歯根端切除術が行えない場合に行われます。Dr. Grossmanの1966年の研究やDr. Benderの1993年の研究では約80%と高い成功率を示していますが、その侵襲性の観点から歯内療法において最終手段とされています。